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同僚に勧められて読んだ。ものすごい読み応えで、ロシアの背景知識があまりない私には読むのはなかなか大変で、時間をかけて読んだ。それでもすっごーい面白かった。面白いし、勉強になるし、共感するものがある。 周知のことだとは思うけど、この人はノンキャリアのロシア専門の(元)外交官だ。ソ連崩壊前後に、初めての任地としてモスクワに赴任し、駐在して、情報収集を担当していた。これはその当時の激動の政治のストーリー、外交の仕事、ロシアでの生活、をつづった本だ。 「面白い」に関して、どういうところが面白いかというと、やはりソ連崩壊の現場に居合わせ、しかも当事者である有力な政治家たちと直接渡り合って得た経験による記述の説得力だ。その場面に居合わせ、その当事者たちと深く関わっていた人にしか書けないものがある。たとえていうならサイゴン陥落のその日に居合わせた近藤紘一の記述のようにだ。佐藤優は、ロシア語を話し、ロシア人社会の中に入っていき、自分と相手との信頼関係を築いたうえで、直接情報を手に入れている。本で読んだり人に調べさせたり通訳翻訳を介したりして得た情報とは、リアリティが違う。読んでいて迫ってくる。 「勉強になる」に関しては、なんといっても、「権力の文法」という言葉でまとめられている、政治を動かす論理について、この本から学ぶところがいっぱいだ。もともと外交の世界を目指していたわけではなかった佐藤自身が、初めての任地でなんとか学びとろうとして奮闘する。その時に、大学院で専攻した「神学」という、表面的には外交と関係ないように思える、浮世離れした学問が必殺の武器として役に立つ、というのが面白い。また、もっと具体的な話として、外交の仕事をする上でのちょっとしたTipsがちりばめられているのもチャームポイントだ。例えば、こういう相手にはどういう料理のあるレストランで会食するのがいいか、盗聴されているとわかっているときはどうするか、問題にならないような方法で賄賂をおくるにはどうするか・・・といったプロフェッショナルの仕事術的な話は、自分の仕事の参考にもなるし、なによりわくわくする。 そして「共感する」に関しては、第一にはいわゆるメジャー言語ではない現地語を勉強して、現地の人たちと対等な関係を築いて、異文化摩擦を経験しながら自分を磨くことで、他の人には得られない深い洞察を得るようになった、という彼の意識だ。それはいわゆる西欧でない国を研究フィールドに選ぶというリスクをとって、あえて長期留学・滞在した人たち(私もそのひとりだ)が共通して持つ自負だと思う。 そして第二には、文庫版巻末の解説で恩田睦も書いているけど、古典的な文系学問を若いときに体に叩き込んだことが、表面的な知識だけではない、全体を把握する強力な思考力を育てた、という(破格の)実例を佐藤が示していることだ。私も、言語学という日本ではほとんど顧みられることのない学問を大学で勉強した一人だ。確かに企業への就職には役に立たなかったものの、今、仕事で大きな問題解決を迫られた時に、抽象的な理論を勉強したことで広い視野からものを見ようとする習慣が、役に立つ場面がある、と感じている。文系学問は、日本では、役に立たないといわれ虐げられて久しいけれども、捨てたもんじゃないのだ。こういう人が底力を見せつけて、すばらしい実例となってくれてうれしい。 そういうわけで、ロシア、社会主義、政治、外交、に興味のある人なら、必ず得るものの多い本だと思う。そうでなくても面白いと思います!私は引き続き何冊かこの人の本を読んでみようと思います。 by absentminded | 2010-06-01 22:46 | 本
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